先輩移住者

都城になかった店をつくる!街に新風を吹き込む大人ダイニング

2023.12.11公開

今、都城市では繁華街・牟田町近くの中町交差点エリアにオシャレな飲食店が続々開店し、話題を集めています。ガラス張りのエントランスの向こうにオシャレな店内が広がる「料理屋Shin」もその一軒。都城出身の店主・江口晋一郎さんは神戸で店を営んでいましたが、子どもたちを自然豊かな環境で育てたいとUターンを決意。現在は子育てを楽しみながら、都会で培った料理の腕を存分に振るい、連日満席が続く繁盛店となっています。

江口 晋一郎さん(45歳)
  • 先輩歴|2022年3月に移住
  • 職業|飲食店経営
「料理屋Shin」。天井が高く、居心地のよい空気感に満ちている

「料理屋Shin」。天井が高く、居心地のよい空気感に満ちている

神戸時代。住宅街の中にあるにも関わらず、メニュー数の多さや美味しさで人気を博していた

神戸時代。住宅街の中にあるにも関わらず、メニュー数の多さや美味しさで人気を博していた

都城市の高校を卒業後、神戸市の「六甲山ホテル」で約6年、同市内のレストランで7年半修業した後、「料理屋Shin」を開業した江口さん。“居酒屋以上、レストラン未満の店”をコンセプトに、本格的な料理をカジュアルに楽しめるとあって人気を博していましたが、お子さんが小学校に入学するタイミングで「もっとゆったりとした環境で子どもたちを育てたい」と都城へのUターンを決意しました。2018年に同郷の奥様が子どもたちを連れて帰郷。その後、江口さんも店じまいをして都城に帰る予定でしたが、そのタイミングでコロナ禍に!紆余曲折を経て、帰郷できたのは2022年3月。2カ月後の5月に新生「料理屋Shin」をオープンしました。

Q なぜ神戸ではなく、都城で子育てをしたいと思ったのですか?

私も妻も都城出身で、妻を神戸に呼び寄せる形で結婚しました。神戸もいい街だったのですが、子どもが通っていた幼稚園では園児の半分以上が“小学校お受験組”で、保護者も教育熱心な人が多かったんです。どちらかといえば私と妻は「子どもが小さいうちは、自然豊かな環境でのびのびと育ててあげたい」という考え方だったので、長女が小学校に入学する2018年のタイミングで家族が先に帰郷することにしました。私も都城市内にテナントが見つかり次第、神戸の店を閉めて帰る予定でしたがコロナ禍に突入したため、神戸の店の営業や物件探しなどが大変になり、最終的には2022年にやっと帰ることができました。

都城市立図書館1階のカフェ「Mall Market(まるマーケット)」にて。この店を手がける都城市内のフレンチレストラン「Chez ken(シェ ケン)」の宮田シェフとは長いつきあいなのだとか

都城市立図書館1階のカフェ「Mall Market(まるマーケット)」にて。この店を手がける都城市内のフレンチレストラン「Chez ken(シェ ケン)」の宮田シェフとは長いつきあいなのだとか

お店の前で。「中心地にお店が増え、徐々に牟田町に人が戻ってきているのを実感しています」

お店の前で。「中心地にお店が増え、徐々に牟田町に人が戻ってきているのを実感しています」

Q テナントはどのようにして探しましたか?

最初、不動産屋を訪ねてみたところ「飲食店をやりたいなら話を聞いてみては?」とタウンマネージャー(※1)を紹介されました。テナントを見つけるところから行政や商工団体が協力してくれるなんて神戸時代には考えられなかったことなので驚きましたね。しかも、訪ねてみると店舗改修の支援制度(※2)があることがわかり、その制度を利用するための事業計画書作成などもしっかりとサポートしてもらえ、正直“ここまでやってもらえるのか!”と感激しましたね。テナントも希望条件を伝えていたところ、3年間ずっと探し続けてくださって。Uターンする約半年前、2021年8月に「いい物件が見つかりそうです」と連絡を受けて物件概要を見たところ、ピン!ときたのですぐに都城に飛んで行き、即契約しました。こうしてお店を開店できたのは本当にタウンマネージャーのおかげです。
※1.都城市中心市街地活性化タウンマネージャー。まちづくりの専門家として、中心市街地の活性化や空き店舗等の活用の推進などを行っている
※2.都城市中心市街地再生プラン事業費補助金

Q 都城市での子育てはいかがですか?

妻は神戸時代から「都城に帰りたい…」と言っていたので、Uターンできて本当に嬉しかったようです。「都城に戻ってこられて本当によかった!霧島連山を見たら落ち着く〜!」と言っています(笑)。長女は小学校入学の時にお友達が誰もいなかったので寂しかったようでしたが、長男と次女は移住当時、保育園児だったのですぐ慣れたみたいでしたね。今では長女にも小学校のお友達がたくさんできて、3人ともすっかり都城っ子です。
今の環境は近所付き合いがあるのがいいですね。子どもがひとりで留守番しなくちゃいけなくなっても「何か困ったことがあったら隣の家に行きなさい!」と言える(笑)。これは都会暮らしの時には考えられなかったことです。人が純粋で温かく、顔の見える付き合いができているのは本当にありがたいです。

霧島連山は都城の人々にとって故郷のシンボル的存在

霧島連山は都城の人々にとって故郷のシンボル的存在

お店のキャパシティーは38席。料理はすべて江口さんひとりでこなしている

お店のキャパシティーは38席。料理はすべて江口さんひとりでこなしている

Q 「都城で飲食店をやってみたい!」という人にアドバイスをお願いします。

出身地とはいえ、都城で仕事をしたことはなかったので、開店時はお客様が来てくださるのか不安でした。ただ、「今までの都城になかったお店をつくる」ということは決めていたので、思い切って神戸時代とほぼ同じメニュー構成、料金で開店しました。お陰様で徐々にお客様が来てくださり「こんなお店を待っていた!」と喜んでいただいています。都城はスーパーで売っている普通のお肉や野菜でも格段に美味しいので、料理人としてもやりがいがありますね。

見知らぬ土地で開業するのは勇気が必要だと思いますが、まずは旅行気分でもいいので都城に来て、いろんなお店を回ったり、人と話をしたりして、自分の肌感覚でこの街を感じるのが一番!です。もちろん私も相談に乗りますよ。でも、やっぱりタウンマネージャーに相談するのが一番の近道かな(笑)。

メニュー数も多いため、仕込みも大変!しかし「メニューが少ないお店より、多くて悩むくらいがちょうどいいですよね。“次はこれ食べよう”って思っていただけたら」と江口さん

メニュー数も多いため、仕込みも大変!しかし「メニューが少ないお店より、多くて悩むくらいがちょうどいいですよね。“次はこれ食べよう”って思っていただけたら」と江口さん

Editor’s note!

長年修業し、念願だった自分の店を開店。しかも繁盛店だったにも関わらず、家族で都城に移住した江口さん。神戸のお店は閉じる予定でしたが、いいタイミングで後輩シェフが「自分がやりたい!」と手を挙げてくれたので残せることになり、江口さんは経営者として月1回程度神戸のお店にも顔を出しているそう。「都城に軸足を置きつつ、時々神戸にも行っています。長年お付き合いのある取引先に顔を出したり、食材を仕入れたり、昔のお客様たちにも会えたり。いろんな刺激も受けますね」と江口さん。家族が安心して暮らせる場所に居を構えつつ、刺激を受ける場所に行って感性を磨く…。プライベートも仕事も充実の江口さんにとって都城移住は大正解だったようです。